採用強化
離職防止
人手不足倒産が過去最多の441件|引き金は採用難だけではない
2026-08-31

2025年度の人手不足倒産は441件で過去最多。うち退職を原因とする「従業員退職型」は118件でした。帝国データバンクの調査から内訳を整理します。
2025年度に発生した「人手不足倒産」は441件で、過去最多を更新しました。
件数だけを見れば、人が採れずに会社が回らなくなった話に見えます。ところが内訳を開くと、そう単純ではありません。
従業員や経営幹部の退職を原因とする倒産が118件あり、こちらも過去最多でした。
帝国データバンクが公表した調査から、数字の中身を順に見ていきます。
2025年度の人手不足倒産は441件、3年連続で過去最多
帝国データバンクの調査によると、2025年度の人手不足倒産は441件で、前年度の350件から約1.3倍に増えました。
年度ベースで400件を超えたのは初めてで、過去最多の更新は3年連続です。
ここでいう人手不足倒産は、従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする倒産を指します。集計の対象は、負債1000万円以上・法的整理による倒産です。
業績の不振全般ではなく、人が足りないことが直接の原因になった倒産に絞った件数、という読み方になります。
出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」
業種別で最も多いのは建設業、全体の25.4%
業種別に見ると、建設業が112件で最も多く、全体の25.4%を占めました。
資格やスキルを持つ現場作業員や営業担当者の退職が相次ぎ、事業の継続が困難になるケースが目立ったとされています。
建設業に続いたのは、次の業種です。
- 道路貨物運送業:55件
- 老人福祉事業:22件
- 飲食店:21件
- 労働者派遣業:12件
いずれも業種別で過去最多を更新しています。人がいなければ売上が立たない労働集約型の産業に、倒産が集中している形です。
引き金の内訳 ── 「従業員退職型」が118件
人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部などの退職を原因とした「従業員退職型」は118件でした。
年度で100件を超えたのは初めてで、4年連続の増加です。
調査では、従業員の退職が相次いだことで例年どおりの工事を受注できなくなり、事業継続を断念した橋梁工事業者の例が挙げられています。若手従業員が立て続けに退職したことが影響し、事業停止を余儀なくされた例も報告されています。
採用に失敗した会社ではなく、いま働いている人が抜けたことが引き金になった倒産です。
採り直そうにも、市場が詰まっている
抜けた人数をすぐ採り直せばよい、という話にならないのは、採用の市場も詰まっているからです。
同じく帝国データバンクの調査では、2026年7月時点で正社員の不足を感じている企業は51.3%でした。7月としては4年連続で半数を超えています。
半数の企業が正社員の不足を感じている市場で、抜けた人数を採り直すことになります。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」
「賃金以外の要素」は、調査の外にある
調査には、企業の声も載っています。求めるスキルを持つ人材の応募が少なく、応募があっても自社より賃金水準の高い企業へ流出してしまう、という声です。
そのうえで帝国データバンクは、特に中小・小規模事業者では賃上げが容易ではないとして、今後は賃金以外の要素も含めた総合的な魅力の構築が不可欠だとしています。
ただし、その「賃金以外の要素」が何を指すのかまでは、この調査は答えていません。
働く場所、任される仕事の範囲、休みの取りやすさ、日々の職場環境。どれが効くかは、業種によっても会社の規模によっても変わります。
ここから先は、統計ではなく、自社を辞めた人が何を理由に辞めたのかという社内のデータで埋めるしかない部分です。
まとめ
- 2025年度の人手不足倒産は441件で、3年連続の過去最多更新となりました。
- 業種別では建設業が112件、全体の25.4%を占めています。
- 退職を原因とした「従業員退職型」は118件で、年度として初めて100件を超えました。
- 2026年7月時点で正社員の不足を感じている企業は51.3%でした。
内訳が示しているのは、人が採れないことと、いま働いている人が辞めることが、どちらも倒産の引き金になっているという事実です。採用を強めるだけでは、118件のほうには届きません。